相続税を依頼する場合の税理士の選び方
相続税を依頼する税理士の選びについて、いくつかのポイントをまとめてみたいと思います。
1 民法の規定や判例を把握していること
相続税は、他の細目と比較して、法律の世界との関連性が深い分野です。
税理士は法律の専門ではありませんが、相続税の申告を行うに当たっては、ある程度、民法の規定や判例を知っておく必要があります。
たとえば、相続税の税額を算定する際には、相続人が誰であるかを確定し、相続分が何分の何であるかを算定する必要があります。
それでは、以下の場合、それぞれの相続分は何分の何になるのでしょうか?
被相続人の子は、AとBの2名です。
Aはすでに亡くなっています。
Aには子であるCがいます。
被相続人がCを養子にした場合、BとCの相続分は、それぞれ何になるのでしょうか?
これらの疑問に正確に答えるには、民法の規定や判例を把握している必要があります。
税金に関することだけでなく、こうした知識も把握していなければ、適切な相続税の申告を行うことはできません。
2 様々な選択肢をシミュレーションできること
相続税の場面では、どのような申告を行うか等について、複数の選択肢があることがあります。
このような複数の選択肢のどれを用いるかによって、相続税の税額が異なってくることがあります。
たとえば、小規模宅地等の特例については、複数の土地に特例を適用することができる場合、限度面積の範囲内で、どの土地に特例を用いるかを選択する必要があります。
このとき、合計の相続税の額を軽減するには、どの土地に特例を適用するかについて、シミュレーションを行う必要があります。
通常ですと、坪単価の大きい土地について、特例を用いるのが有利でしょう。
もっとも、土地を取得するのが誰であるかによって、そもそも、特例を用いることができるかどうかの違いが生じてくることがあります。
また、小規模宅地等の特例には、居住用宅地、事業用宅地、貸付事業用宅地があり、それぞれで、特例を用いることができる限度面積、評価額の減額割合が異なってきます。
どの土地に特例を適用するかを検討するにあたっては、上記の点を総合的に考慮し、複数の選択肢のシミュレーションを行う必要があります。
こうした複数の選択肢についてシミュレーションを行うには、複数の選択肢とその計算方法を熟知し、計算結果に与える影響を把握しておく必要があります。
3 相続税を依頼する場合の税理士の選び方
税理士を選ぶ際のポイントは様々ですが、相続税では、以下の点が代表的なポイントになってくるものと思います。
これらのポイントを満たす税理士は、相続税に特化した税理士になってくるのではないかと思います。
相続税で困った場合の相談先
1 どこで相続税の相談をするか
相続税は、多くの場合、被相続人が亡くなってから10か月以内に、申告書の提出と納付を行う必要があります。
人生で相続税の申告書を提出しなければならない場面は、あっても1回、2回のことだと思います。
このような場面に直面した場場合、どこに相談すれば良いのでしょうか?
税金の問題というと、税理士や税務署を思い浮かべる方が多いと思いますので、それぞれについて説明を行いたいと思います。
2 税務署
相続税の申告書の提出先は、被相続人の最後の住所地を管轄する税務署になります。
このように、税務署に申告書を提出するのであれば、税務署に相談すれば良いのではないかと思われる方もいるかもしれません。
確かに、税務署に問い合わせを行うと、税金についての一般的な相談を行うことができます。
とはいえ、相続税については、税務署に相談して申告書を作成することを試みることは、お勧めできません。
相続税の申告書は、一般的な回答を得ただけでは到底作成することができないからです。
というのも、相続税の申告は、不動産、金融資産等の個別の財産を1つ1つ評価し、その評価に基づいて税額を計算しなければ、作成することができないからです。
一般的な回答を得たあとには、こうした個別の作業を行わなければ、申告書を作成することはできませんが、こうした作業は、税務署では行ってくれず、各自が行わなければならないこととなります。
結局、こうした作業を適切に行うためには、税金の専門家である税理士に相談する必要が生じることとなるでしょう。
3 税理士
税理士は、税金の専門家として、相続税の申告をアシストします。
税理士は、個別の財産について調査を行い、評価額を算定し、税額を計算し、申告書を完成させます。
税理士にご相談いただいた場合は、こうした作業を税理士に任せることができます。
また、小規模宅地等の特例等、税額軽減の制度の適用が見込まれる場合も、税理士に相談するメリットがあるでしょう。
税理士は、これらの適用が可能かどうか、どのように適用するのが最も有利かを、シミュレーションし、アドバイスを行うこともできるからです。
税理士にご相談いただくことについては、これらのメリットがあると言えます。
4 税理士にご相談いただく場合の注意点
ただ、税理士にご相談いただく際には、注意しなければならないことがあります。
それは、税理士によっては、相続税をわずかしか取り扱ったことがないことがあり得るということです。
先に述べた点との関係でも、相続税に特化した税理士にご相談いただいた方が、メリットが大きいと思います。
相続税について税理士に相談するべきタイミング
1 税理士に相談するべきタイミング
相続税について税理士に相談するべきタイミングは、早ければ早いほど良いです。
相続税については、被相続人が亡くなったことを知ってから10か月以内に、申告書を税務署に提出し、納付を行う必要があります。
この期限に間に合わなかった場合は、本来の相続税に加えて、加算税や延滞税を納付しなければならなくなるおそれがあります。
こうした期限が存在するため、早めに税理士に相談しなければ、不利益が生じるおそれがあります。
以下では、その具体的な理由を説明したいと思います。
2 正確な申告書の作成
税理士に早めに相談することにより、十分な資料を取得し、綿密に検討して、正確な申告書を作成することができます。
資料を取得する際には、相続に関する証明を行う必要があるため、基本的には、被相続人の戸籍、相続人の戸籍を取得しておく必要があります。
こうした戸籍は、本籍地が存在する市町村役場で取得する必要があります。
このため、被相続人が本籍地を転々としていた場合には、複数の市町村役場で戸籍を取得する必要がありますし、被相続人の本籍地が遠方にある場合には、遠方の市町村役場とやり取りして戸籍を取得する必要があります。
このため、必要なすべての戸籍を取得するのに、かなりの時間が必要になることがあります。
また、資料を取得する際には、相続財産に関係する個々の窓口に問い合わせを行い、それぞれの窓口で資料を取得する必要があります。
不動産でしたら、不動産が存在するすべての市町村役場で書類を取得しなければならないことがあります。
同様に、預貯金でしたら、すべての金融機関で、株式でしたら、すべての証券会社で、書類を取得する必要があります。
これらの資料を取得するとなると、かなりの時間が必要になってきます。
申告書の作成についても、個々の財産の内容を正確に記載します。
不動産については、個々の不動産について、通達のルールを適用して評価を行う必要があります。
その後、実際に払戻がなされた財産と照らし合わせ、記載の漏れがないかを確認する必要があるでしょう。
また、預貯金通帳の出入金記録を確認し、他に相続財産がないかをチェックする必要もあります。
このようにして申告書の作成がなされることとなりますので、申告書の作成についても、十分な準備期間が必要になります。
税理士による相続税の申告のための不動産の調査
1 相続税の申告のための不動産の調査
近年でも、不動産は、相続税の課税対象になる財産のうち、大きな割合を占めています。
特に、被相続人が宅地や雑種地を所有していた場合は、評価額が大きくなる可能性がありますので、適切な評価を行うことを心がける必要があります
被相続人の自宅等の居宅の底地や、アパートや貸店舗の底地については、宅地として評価がなされることとなります。
また、駐車場や資材置場については、雑種地として評価がなされることとなります。
これらの不動産については、特に、適切な評価を行えるよう、必要な調査を尽くす必要があります。
ここでは、不動産を調査する際のポイントをまとめたいと思います。
2 土地の現在の状態を把握する
不動産を評価するに際には、登記簿等の書類を確認するだけでなく、実際に現地へ赴き、土地の現在の状態を把握しなければならないことがあります。
たとえば、現地へ行って現在の状態を調べると、土地の一部が、道路として利用されていることが判明することがあります。
道路が、不特定多数人が通行する公衆用道路に該当するのでしたら、道路として利用されている一部については、評価額が0円となる可能性があります。
このように、土地の現在の状態を確認することで、初めて、土地の適正な評価が可能になることがあります。
3 公法規制を把握する
土地の評価に際しては、国や自治体による規制の有無を確認すべき場合があります。
国や自治体による規制が存在すると、土地の利用方法が制限されたり、建築できる建物が制限されたりするため、土地の価値が低下することがあります。
こうした規制を見逃すと、規制の存在を理由として、土地を減価して評価するのが妥当であるのに、減価しないままの高い評価額で評価してしまうこととなってしまいかねません。
たとえば、都市計画に基づき、容積率が指定されると、建築物の規模が制限されることとなります。
ある土地において、容積率が小さい部分が存在する場合は、その部分での建築の制限がより厳しくなるため、土地の評価額が減額される可能性があります。
土地の評価の際には、このような公法規制の存在にも気をつけなければなりません。
税理士による相続税の申告のための金融資産の調査
1 相続税の申告のための金融資産の調査
相続税の申告書には、漏れなく相続財産を記載する必要があります。
申告書に記載漏れのある財産が存在すると、後日、追加で納税しなければならないだけでなく、加算税や延滞税も納付しなければなりません。
相続税の申告は、どれだけ、漏れなく財産の調査を尽くすことができるかの勝負であるといえます。
以下では、金融資産の調査のポイントを、いくつかまとめたいと思います。
2 名義預金に注意する
相続税の申告で、申告漏れが起きがちなのが、名義預金です。
被相続人以外の人の名義になっている預貯金であっても、被相続人が貯めた貯金であり、生前、被相続人が管理を行っていたものについては、名義預金と扱われ、相続財産に含まれるものとされる可能性があります。
このような預貯金について、名義が被相続人以外の人になっているという理由だけで、相続財産には該当せず、相続税の申告の対象にもしないこととしてしまうと、後日、税務署から、相続財産に含まれるとの指摘がなされ、加算税や延滞税が課税されるおそれがあります。
このような事態を避けるためには、名義預金の存在に注意する必要があります。
たとえば、被相続人の自宅を確認したところ、それまで、誰も存在を知らなかった預貯金で、被相続人以外の人の名義のものが見つかることがあります。
このような預貯金は、被相続人が貯めたのであり、被相続人が管理していたものであると考えられますので、基本的には相続税の課税対象になるでしょう。
3 配当金や分配金、端株に注意する
株式や投資信託については、証券会社が発行した取引残高報告書を用いれば、相続税の課税対象となるものを把握することができます。
証券会社によっては、参考と題して、相続税評価額を記載した書類を発行してくれることもあります。
もっとも、株式や投資信託については、証券会社の書類を転記しただけだと、申告漏れが生じるおそれがあります。
たとえば、株式については、被相続人が亡くなる前に四半期末が到来しており、その四半期で配当金が発生している場合には、配当金の入金が相続後であったとしても、未収配当金か配当期待権として相続税の課税対象になります。
投資信託についても、被相続人が亡くなる前に決算期が到来しており、その決算期で分配金が発生しているのでしたら、分配金の入金が相続後であったとしても、未収分配金として相続税の課税対象になります。
このように、証券会社の取引残高報告書に記載のない部分については、申告漏れが生じがちですので、注意が必要です。
不動産評価に強い税理士に相談すべき理由
1 相続税と不動産評価
相続税では、不動産評価をどのように行うかが重要になってきます。
不動産は、宅地や雑種地ですと、個々の評価額がまとまった金額になりがちです。
また、相続財産の総額との関係でも、不動産が大きな割合を占めることが多いでしょう。
このため、不動産の評価をどのように行うかによって、最終的に納付すべき相続税の額は、大きく変わってきます。
そして、不動産評価は、個々の税理士で、どのような結果になるかが大きく異なってきます。
税理士により、どこまで詳細に通達の規定を適用することができるか、実務上認められている評価方法を用いることができるかが、大きく異なってくるためです。
このように、税理士によって不動産評価の結果が大きく異なってくる以上、不動産評価に強い税理士に相談すべきであると言うことができます。
ここでは、税理士によって不動産評価の結果が大きく異なった例を挙げ、不動産評価に強い税理士に相談することのメリットを説明したいと思います。
2 税理士によって不動産評価の結果が大きく異なった例
この例では、宅地の評価が問題になっていました。
土地の評価は、路線価地域の場合、まずは、土地の1㎡あたりの評価額を算定し、これに土地の地積をかけ算することによって算定します。
このため、土地の地積を何㎡とするかは、最終的な土地の評価額に影響してくる、重要な要素になります。
当初、申告書を作成した税理士は、宅地の形状を地積測量図で確認し、さらに、宅地の地積を固定資産税納税通知書に記載された地積を確認しました。
そして、固定資産税納税通知書の地積に基づき、宅地の評価を行っていました。
ところが、宅地の航空写真を確認したところ、地積測量図に記載された形状と比較して、端の部分が欠けた状態になっていることが判明しました。
さらに、宅地を現地調査したところ、宅地の欠けた部分が、公衆用道路の一部になっていることが判明しました。
土地の一部が公衆用道路として利用されている場合、その部分は評価額が0円と扱い、公衆用道路部分を除いた地積で宅地の評価を行うことができる場合があります。
そこで、航空写真を地積測量図に投影し、公衆用道路部分の地積を算定し、その地積を除いて、宅地の地積を算定することとしました。
これにより、宅地の評価額を妥当な金額に減額して、相続税申告を行うことができました。
申告期限までに相続税の申告を行っていない場合は,どうすべきでしょうか?
1 相続税の申告期限
相続税の申告期限は,被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内とされています。
被相続人が亡くなった日=被相続人が死亡したことを知った日であることが多いと思いますので,基本的には,被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内に,相続税の申告を行わなければならないこととなります。
この10か月の期限内に,管轄税務署に,相続税の申告書を提出する必要があります。
2 相続税の申告期限が過ぎてしまっても,自主的に早期に申告すべき
相続税の申告期限を過ぎてしまった場合,相続税の本税に加算して,無申告加算税,延滞税が課税されることとなります。
無申告加算税は,相続税の申告期限が過ぎてしまった以上,課税を避けることはできません。
ただし,税務調査等がなされる前に自主的に申告を行ったか,税務調査等がなされる段階で申告を行ったかによって,税率が変わってくることとなります。
税務調査等がなされる前に自主的に申告を行った場合には,無申告加算税の税率は5%に抑えることができます。
他方,税務調査の事前通知以降に申告がなされた場合は,本税のうち50万円以下の部分については10%,50万円を超える部分については15%の無申告加算税が課税されます。
税務調査の結果,更正等の予知がなされた後であれば, 本税のうち50万円以下の部分については15%,50万円を超える部分については20%の無申告加算税が課税されます。
延滞税も,相続税の申告期限が過ぎてしまった以上,課税を避けることはできません。
延滞税は,相続税の本税を納税する時期が遅くなればなるほど,増えていくこととなります。
延滞税の税率は,時期によって異なりますが,2020年6月17日現在ですと,納付期限から2か月以内は2.6%,納付期限から2か月以降は8.9%となっています。
このように,無申告算税については,自主的に申告を行えば,税率が抑えられることになります。
延滞税についても,早期に申告を行えば,発生する期間をより短くすることができますので,税額を抑えることができます。
したがって,期限後であっても,無申告加算税,延滞税の負担を抑えるため,自主的に早期に申告を行うのが望ましいということになるでしょう。
3 配偶者の税額軽減(配偶者控除),小規模宅地等の特例の適用を受けるためにも,期限後申告を行うべき
また,期限後申告であったとしても,自主的に申告を行うことができれば,配偶者の税額軽減(配偶者控除),小規模宅地等の特例を利用できます。
配偶者の税額軽減(配偶者控除)とは,配偶者が取得した財産のうち,1億6000万円か,配偶者の法定相続分相当額のうち,どちらか多い金額までは,相続税が課税されないという特例です。
小規模宅地等の特例は,一定の宅地等について,限度面積までは,評価額を8割または5割減額する特例です。
いずれも,特例を適用することができれば,相続税額を大きく減額できる可能性があります。
もっとも,これらの特例を適用するには,前提として,以下の要件を満たしている必要があります。
・ 遺産分割,遺言等により,財産を取得する人が確定していること
・ 申告を行うこと
そして,ここでいう申告には,期限後申告も含まれるとされています。
したがって,期限後であっても,遺産分割,遺言等で財産を取得する人が確定しており,自主的に申告を行えば,これらの特例を適用し,相続税額を大きく減額することができる可能性があります。
もっとも,税務調査がなされ,更正処分がなされると,もはや自主的に申告を行う余地はなくなりますので,これらの特例を適用することはできなくなります。
また,申告期限から3年が経過すると,「申告期限後3年以内の分割見込書」が提出されていない以上,もはやこれらの特例を適用する余地はないと解されます。
したがって,これらの特例を適用するためにも,申告期限後であっても,早期に自主的に申告するのが望ましいということになります。
相続税の基礎控除
1 相続税の基礎控除とは
相続税は,すべての相続について課税されるわけではありません。
相続税は,概ね次の計算式によって算定されます。
相続または遺贈により取得した財産の価額+みなし相続により取得した財産の価額-債務・葬儀費用=相続税の課税価格
(相続税の課税価格-基礎控除)×税率=相続税
つまり,相続税の課税価格は,相続等により取得した財産の価額に,生命保険金や死亡退職金のうち非課税限度額を超える価額を加算し,債務と葬儀費用を引き算することによって算定されます。
この相続税の課税価額から,基礎控除額を引き算し,税率が掛け算されることとなります。
ここから,相続税の課税価額が基礎控除額を超えない場合は,相続税が課税されず,相続税の課税価額が基礎控除額を超える場合に,初めて,相続税が課税されることが分かります。
したがって,基礎控除額を正確に把握すれば,相続税が課税されるかどうかが分かるということになります。
2 相続税の基礎控除額は計算方法
相続税の基礎控除額は,次の計算式によって算定されます。
3000万円+600万円×法定相続人数
したがって,法定相続人数次第で,相続税の基礎控除額は以下のとおり変動することとなります。
法定相続人数が1人→基礎控除額は3600万円
法定相続人数が2人→基礎控除額は4200万円
法定相続人数が3人→基礎控除額は4800万円
法定相続人数が4人→基礎控除額は5400万円
法定相続人数が5人→基礎控除額は6000万円
このように,相続税の基礎控除額は,法定相続人数が増えれば増えるほど,増額されることとなります。
被相続人の兄弟姉妹や甥姪が法定相続人となるような場合は,法定相続人数が多くなる傾向にあり,基礎控除額も大きくなることが多いです。
3 法定相続人の中に相続放棄をした人がいる場合
相続税の基礎控除額の算定に当たっては,相続放棄をした人がいても,その放棄がなかったものとして法定相続人数が算定されることとなっています。
つまり,法定相続人の中に相続放棄を行った人がいたとしても,放棄がなかったものとして法定相続人数が算定されますので,基礎控除額は変わらないということになります。
これは,相続放棄によって法定相続人数が変動することとしてしまうと,恣意的に相続放棄が行われ,意図的に法定相続人数を増やすといった行動に出る人が出てくるおそれがあるためです。
4 法定相続人の中に養子がいる場合
被相続人に養子がいる場合は,基礎控除額の計算上,法定相続人数に算入できる養子の人数は,次のように限定されています。
被相続人に実子がいる場合→養子は1人のみ算入
被相続人に実子がいない場合→養子は2人のみ算入
このように,基礎控除額の計算上,無制限に養子を法定相続人数に算入できることとしてしまうと,恣意的に養子縁組を行い,法定相続人数を増やし,意図的に基礎控除額を増やすという「相続税対策」が行われるおそれがあるためです。
いくつかの具体例を示すと,以下のとおりです。
実子が2人,養子が3人→実子2人,養子1人を算入→ 基礎控除額は,3000万円+600万円×3人=4800万円
実子が1人,養子が3人→実子1人,養子1人を算入→ 基礎控除額は,3000万円+600万円×2人=4200万円
実子が0人,養子が3人→実子0人,養子2人を算入→ 基礎控除額は,3000万円+600万円×2人=4200万円